【導入事例】

北海道大学大学院理学研究院 宇宙化学研究室 様

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太陽系の起源を探る「宇宙を覗く顕微鏡」
超高感度極微小領域同位体イメージングを支えるフェムト秒レーザ


主な研究内容:

北海道大学大学院理学研究院 地球惑星科学部門 助教
馬上 謙一 氏

北海道大学大学院理学院 自然史科学専攻 教授 創成研究機構 教授
JAXA 地球外物質研究グループ長 教授 圦本 尚義 氏

北海道大学 宇宙地球化学研究室では、太陽系の起源と 進化を物質に着目し解明する研究を行っています。そのため、光学顕微鏡、電子顕微鏡、X線分光法、質量分光法などの手法を駆使して、地球内外の物質を正確に分析し、解析しています。この結果、まったく新しい惑星や太陽系の起源や生い立ちが詳しくわかってきました。また、地球内外物質からこれまで読み取られていなかった新しい情報を獲得するため、物質を解析する新しい方法(分析法、解析装置、合成装置)の設計・開発も同時に行っています。

μメートル単位で正確に同位体の分布を観察できる世界で唯一の装置同位体顕微鏡システム

μメートル単位で正確に同位体の分布を観察できる
世界で唯一の装置同位体顕微鏡システム

太陽系のロゼッタストーン「隕石」

太陽系のロゼッタストーン「隕石」

イトカワ微粒子 ~「はやぶさ」が持ち帰った太陽系の化石

地球から3億キロ離れた小惑星イトカワから史上初となる微粒子の持ち帰りに成功した探査機「はやぶさ」。その小さな砂粒は、隕石とは異なり、地球の大気や熱による変質や汚染がない手つかずの「太陽系の化石」です。

この太陽系の化石を、物質中の同位体を手がかりに分析し太陽系の起源を明らかにしたのは、北海道大学の圦本教授率いる宇宙地球化学研究室の研究員達です。そしてこの分析に使用されたのが、圦本教授が20年がかりで開発したという重さ10トン、総延長7メートルの巨大な同位体顕微鏡システムです。マイクロメートル単位で正確に同位体の分布を観察できる世界で唯一の装置です。物質を構成する原子には、同じ原子番号であっても質量が違う同位体があります。この顕微鏡システムでは、この同位体を検出し、その違いを非常に高い精度で測定することを可能にしています。

この世界で唯一の巨大顕微鏡システムにより、同じ元素でも質量がわずかに違う「同位体」を酸素やマグネシウムなどの同位体の比率で調べ、イトカワの岩石がどの型の隕石と 同じかという問題を解明しました。たとえば、マグネシウムの同位体比からは粒子ができた年代が分かります。太陽系の誕生時に豊富に存在したアルミニウムの同位体はマグネ シウムの一つの同位体に変化するため、このマグネシウムが多いほど、微粒子の形成年代が古いことがわかります。またイトカワの微粒子の28個の酸素同位体比を調べた結果、イトカワの酸素同位体比は地球上の物質とは明らかに異なっており、コンドライト隕石に含まれる鉱物と非常によく似ていることがわかりました。これにより隕石が小惑星からやってくることが証明されました。

このように元素の特定を行うことにより、46億年前に遡る小惑星や太陽系の成り立ちが解明されていくのです。

フェムト秒レーザを使った装置改良で、新たに希ガスを分析

同研究室では、隕石の表面などさらなる極小領域に対す る詳細な分析が行えるよう、常に独自でこの同位体顕微 鏡システムのさらなる開発/研究を行っています。

その圦本研究室では2014年12月、それまで磁場偏向型の質量分析を行っていた1号機/2号機に代わる新システムとしてレーザを用いた3号機LIMAS(Laser Ionization Mass nanoScope)を開発しました。

新システムでの課題は、空間分解能を高めより微小な場 所を分析すること、あわせて従来は極微小領域での計測手法が存在しなかった希ガスの分析も行えるようにすることでした。この2つの要件を満たすために開発された新システムでは、イオンビームの発生装置を改良することにより、空間分解能を従来機に比べ100倍まで高めることに成功しました。また希ガスの分析を可能にするため、高い強度を実現するフェムト秒パルスレーザの発生装置を搭載しました。細く絞られた1次イオンビームによってスパッタされた中性粒子をレーザ照射することによりポストイオン化し質量分析することで従来の分析装置にない高感度、高空間分解能、高質量分解能を実現しています。これにより、Heをはじめとするあらゆる原子のイオン化が可能になりました。

超高感度極微量質量分析システム
フェムト秒レーザ「Astrella」搭載の"LIMAS"(Laser Ionization Mass nanoScope)

超高感度極微量質量分析システム
フェムト秒レーザ「Astrella」搭載の

また、新システムでは、「飛行時間型質量分析装置(TOF-MS:Time of Flight Mass Spectrometer)」を採用し、連続ではなくパルス化した一次イオンビームを照射するシステムに改良がなされました。同一のタイミングで飛行を始めたイオンが検出器に到達するまでの時間差を検出することにより、それぞれがどのような質量を持つイオ ンであるのかを割り出します。この飛行時間型の質量分析法の採用により、幅広い質量範囲のマススペクトルを1回の一次イオンビームのパルスで取得することができ、また多元素の同時分析が可能になりました。

宇宙空間の物質は、太陽風(太陽からのプラズマ流)を浴びるなどした際、特徴的な希ガス元素組成を保持していることがあります。これは太陽風というイオンビームが照射された際、それを浴びた物質の中に注入されてしまうためです。それらの元素についてこのフェムト秒レーザ発生装置にて分析を行うことにより、太陽系で起きた現象についてさまざまなことを知ることができるのです。

LIMASシステム模式図

今まで見ることができなかったものを観る

またこれまで主に隕石を対象として、太陽系以外の星で形成したと考えられる先太陽系物質の探索や、初期太陽系形成過程における酸素同位体不均一の解明などに取り組んできました。その隕石を相手に鍛えてきた同位体分析技術が、実に広い分野に応用できる可能性があります。たとえば、化学的性質の同じ同位元素は、標識分子として試料内の場をほとんど乱さない最高のトレーサーであり、同位体比イメージングを行うことで、新しい材料の設計や生体内での物質の動きを追うことなどへの活用が期待されます。同研究室では、宇宙化学だけでなく、同位体顕微鏡を用いて可能なあらゆる分野に研究の裾野を広げていきたいと考えています。

レーザ導入の決め手

希ガスの分析など高い強度を実現するためLIMASシステムにて導入されたフェムト秒パルスレーザ「Astrella」。このような最先端の研究に必要な高い要件を満たすシステムとして本製品を選定いただいた理由を、以下のとおり圦本教授、馬上助教両氏にお話しいただきました。

「私たちがレーザに求めたのは、高い強度と安定性。希ガスというのは不活性ガスといわれイオン化しにくいため、強い力で電子を引きはがすしかありません。そのためには高い強度が必要で、またフェムト秒レーザでないとイオン化が実現できない。ハイパワーで産業用の耐性試験を採用し安定性を売りにしているAstrellaはその要件を満たしてくれるレーザだと思いました。強度が高いほど高感度の結果が得られますし、また検出限界が下がるため応用範囲が広くなります。」(圦本氏)

「時には12時間も連続してレーザを使用し実験を行うこともあります。このような長時間の実験にも耐えうる安定したシステムであることは必須の要件でした。これまで、何も問題なく安定して実験を行うことができています。また、サービスの面では、定期的にメンテナンスに来てもらえているので、常に微調整を行うだけで欲しいスペックが実現できているのが嬉しいですね。」(馬上氏)

圦本教授はJAXA 地球外物質研究グループ長として、2020年に帰還予定のはやぶさ2によりもたらされるであろう新たなサンプルについての研究プロジェクトにも従事されており、今後のさらなる発見に期待を寄せられています。

導入レーザ製品

次世代ウルトラファーストkHz再生増幅器「Astrella」

Astrella

Astrella
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